コラムColumn

2026.08.07 耐熱グリース

耐熱グリースの選び方|使用温度180℃・210℃・250℃・500℃別に用途と種類を解説

グリースは温度が上がると、バターが溶けて油が浮き出るように、油分が分離し始めます。一般的なグリース(リチウムグリース)では、100℃を超えたあたりから徐々にこの傾向が現れ、温度が上がるほど加速します。130℃前後になると軟化・流出が顕著になり、垂れ・飛散・給脂回数の増加・焼付き・設備停止といったトラブルにつながりやすくなります。「130℃が絶対的な基準」というわけではありませんが、グリースの耐熱性を語るうえでひとつの目安としてグリース業界でも広く認識されている温度帯です。

 

高温環境では、「とりあえず高温対応のグリースを入れる」だけでは十分ではありません。使用温度、荷重、設備の種類によって、最適なグリースは変わります。

 

そこで本記事では、180℃・210℃・250℃・500℃といった使用温度の目安と、実際の用途・設備の傾向をもとに、自社の設備や課題に合う耐熱グリースを選びやすく整理しました。

 

また、後半ではニッペコの耐熱グリース4製品を比較し、
• どの温度帯に向くのか
• どんな設備・業界で使われているのか
• 切替によって何が改善しやすいのか
まで、実績ベースでご紹介します。

 

※本記事でいう「耐熱グリース」は、一般の方にもわかりやすいように使っている総称です。厳密には、製品ごとに耐熱性・耐荷重性などの得意分野が異なります。

 

▶ 製品・用途についてすぐ相談したい方は[お問い合わせページ]へ (用途がまだ決まっていない段階でも、条件整理からお手伝いできます)

 

目次

1. 耐熱グリースとは?高温で一般グリースが使えなくなる理由
2. 耐熱グリースの性能を決める2つの要素「増ちょう剤」と「基油」
3. 【使用温度別】耐熱グリースの選び方
4. 用途・お悩み別の耐熱グリースの選び方
5. ニッペコの耐熱グリース4製品 比較
6. 価格だけで選ばない。耐熱グリースはトータルコストで考える
7. よくある質問
8. まとめ

 

1. 耐熱グリースとは?高温で一般グリースが使えなくなる理由

耐熱グリースとは、高温環境でも性能低下を起こしにくいよう設計されたグリースです。一般的なグリース(リチウムグリース)は、温度が上がると油分がにじみ出たり、軟化したり、最悪の場合は焼付きを起こします。そのため、モーター周辺、乾燥炉、焼成炉の近傍、製鉄・搬送設備、樹脂成形機の高温部などでは、耐熱グリースの採用が必要になります。

 

1-1. 一般的なグリースの耐熱限界は約130℃

一般的なグリース(リチウムグリース)は、約130℃前後がひとつの目安です。もちろん、条件によってはそれ以上でも使える場合がありますが、連続運転や高荷重、長時間の高温環境では注意が必要です。

 

1-2. 高温でグリースに起こるトラブル(軟化・流出・スラッジ化・焼付き)

高温になると、グリースには次のような変化が起こりやすくなります。

• 軟化:グリースがやわらかくなり、形を保ちにくくなる
• 流出:部品から外へ出てしまう
• スラッジ化:熱で劣化した成分が、黒色状のねばついた汚れになる
• 焼付き:潤滑がうまくいかず、金属同士がこすれ局所的に溶けて動かなくなる

 

ここで大切なのは、「高温なら耐熱グリースを入れれば安心」とは限らないということです。高温に耐える力だけでなく、どの設備に、どんな条件で使うかがとても重要になります。

 

2. 耐熱グリースの性能を決める2つの要素「増ちょう剤」と「基油」

要素 役割 主な影響 ニッペコの製品名
増ちょう剤 グリースの骨格をつくる 耐熱性、機械安定性、耐荷重性、耐水性 ウレア=ユーレットWEP/カルシウムスルフォネート複合石けん=カルフォレックスEP/フッ素樹脂(PTFE)=ロゲネストラムダHJM-8/無機/固体潤滑剤併用=超耐熱グリースGP
基油 潤滑の主体となる油 蒸発性、酸化安定性、低温性 鉱油=ユーレットWEP、カルフォレックスEP/フッ素油=ロゲネストラムダHJM-8/高温用特殊基油=超耐熱グリースGP

※一般の方は、ここを細かく覚えなくても問題ありません。まずは「高温で使えるか」「垂れにくいか」「水や荷重に強いか」を見れば十分です。

 

2-2. 増ちょう剤別の耐熱性・使用可能温度の目安

増ちょう剤の種類 特徴 使用可能温度の目安 ニッペコの製品名
リチウム石けん 汎用性が高い 〜130℃前後 一般グリースの代表
リチウム複合石けん 耐熱性に優れる 150〜180℃前後 LICOREX
ウレア 耐熱性・長寿命に優れる 150〜180℃前後 ユーレットWEP
カルシウムスルフォネート複合石けん 耐熱・耐水・耐荷重のバランスがよい 〜210℃前後 カルフォレックスEP
フッ素樹脂(PTFE) 耐熱性・長寿命に極めて優れる 〜250℃前後 ロゲネストラムダHJM-8
無機・固体潤滑剤併用 超高温用途で使用 〜500℃前後 超耐熱グリースGP

 

2-3. 基油別の耐熱性の目安

基油の種類 特徴 耐熱性の目安 ニッペコの製品名
鉱油 価格と性能のバランスがよい 標準〜中温域 ユーレットWEP、カルフォレックスEP
合成油 蒸発しにくく、酸化安定性に優れる 中温〜高温域 パーマルブシリーズ、ユーレットシリーズ
フッ素油 極めて蒸発しにくく、極めて酸化安定性に優れる 長期にわたる高温域 ロゲネストラムダHJM-8
高温用特殊基油 高温下での基油の揮発性を重視。固体潤滑剤が残存 超高温域向け(基油は蒸発) 超耐熱グリースGP

 

2-4. 成分の話を深掘りしすぎない理由

成分の違いは重要ですが、現場で本当に必要なのは、「自社の設備や課題に合うか」を見極めることです。そのため本記事では、増ちょう剤や基油の違いは最低限にとどめ、後半で温度帯別・用途別・製品別に選び方を整理していきます。

 

3. 【使用温度別】耐熱グリースの選び方

耐熱グリースを選ぶときは、まず使用温度を起点に考えるのが基本です。ただし、温度だけで判断すると、自社の設備や課題に合わないことがあります。

 

同じ高温でも、
• 連続運転なのか、断続運転なのか
• 一時的な昇温なのか、長時間にわたり高温が継続するのか
• グリースをポンプや人手で追加給脂するか、追加給脂せずに連続的に使用するか
• 荷重や振動が大きいのか
• 精密装置なのか
などによって、必要な性能は大きく変わるからです。

 

選定の基本ステップ
1. 使用温度を確認する
2. 荷重・水・薬品・汚れの有無を確認する
3. 設備の種類と回転条件を確認する
4. 給脂頻度や保全工数を確認する
5. 初期価格ではなくトータルコストで比較する
ここでは、温度帯ごとに「起きやすい課題」と「それを踏まえた製品の選び方」を整理します。

 

▶ 使用温度がわからない・症状から選びたい方は [4章 用途・お悩み別の選び方] へ

 

3-1. 150〜180℃:耐熱ウレアグリース ―「垂れ・流出・給脂の手間」が課題になる温度帯―

この温度帯で起きやすい課題
一般的なリチウムグリース(汎用品)の耐熱限界は約130℃前後です。150〜180℃の環境では、次のような問題が起きやすくなります。
垂れ・流出:高温でグリースが軟化し、ベアリングやピンなど機構部品から流れ出る
飛散・汚染:軟化したグリースが回転部から周囲へ飛び散り、設備や製品を汚す
持ちの悪さ:グリースが失われるペースが早くなり、給脂の回数が増える
焼付きリスク:グリースがなくなった状態で運転が続くと、金属摩耗・焼付きにつながる
特に建設機械・農機・屋外設備のように、高温に加えて振動・泥水・粉じんの影響を受ける環境では、「夏場になるとグリースが垂れる」「ピンのガタつきが増える」「給脂の手間が増えた」といった悩みが出やすい温度帯です。

 

課題を解決するために:ユーレットWEP
ユーレットWEPは、ウレア系増ちょう剤を使用した耐熱グリースで、高温でも形を保ちやすく、部品への付着性(くっつきやすさ)が高いことが特長です。一般的なリチウムグリースからの切り替えで、垂れ・飛散の低減や給脂頻度の削減につながりやすい製品です。

 

主な用途
• 産業機械(ベアリング、ギヤ、減速機)
• 荷役機械(フォークリフト、リフト機構、スライドレールなど)
• 油圧ショベル・クレーン・アスファルトフィニッシャー(ベアリング、シリンダー、ピンブッシュ、摺動部など)
• 農機(コンバイン、トラクターのギヤ、ベアリング、摺動部)
• 鉄鋼設備(圧延機、搬送テーブルのベアリング)

 

切り替えで改善しやすいポイント
• 高温時のグリース垂れ・流出の低減
• 飛散による周辺汚染の低減 • 給脂頻度・保全工数の削減
• 振動・泥水環境でのグリース残留性の向

 

▶ ユーレットWEPが自社設備に合うか確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

3-2. 〜210℃:カルシウムスルフォネート複合グリース ―温度だけが問題ではない。「高荷重・水・さび」が重なるときの選択肢―

この温度帯で起きやすい課題
210℃はカルフォレックスEPの最高使用温度ですが、温度が高いから条件が重なるわけではありません。高荷重・水・さびといった条件は、温度が低い場面でも単独でグリースを限界に追い込みます。そして、これらが重なったとき、耐熱性に優れたユーレットWEP(ウレアグリース)でも対応しきれない場面が出てきます。
高温×高荷重:高温下での重荷重や衝撃は、油膜を破りやすく焼付きリスクが高まる
高温×水・湿気:製紙・港湾・洗浄ラインなど、水がかかる設備ではグリースが乳化・流出しやすい
高温×腐食環境:酸・アルカリ洗浄ラインでは、グリース自体が劣化しやすく、軸受のさびも問題になる
周辺汚染:モリブデン入りの黒グリースを使っている場合、周囲への黒い汚れが問題になることがある
「グリースが持たないのか、別の原因でさびているのか、複数の要素があり何をすれば解決できるのかよくわからない」という状態で相談を受けるケースも多い温度帯です。

 

課題を解決するために:カルフォレックスEP

カルフォレックスEPは、カルシウムスルフォネート複合石けん系のグリースで、耐熱・耐荷重・耐水・防錆のバランスに優れています。一製品で複数の過酷な条件に対応できるため、条件が重なる設備での選定に強みがあります。

 

主な用途
• 産業機械・建設機械・農業機械の軸受・摺動部・ピン・ブッシュ
• 港湾・クレーン類(ガントリー、ジブ、アンローダー等)のチェーン・ベアリング
• 高温環境の軸受・搬送装置・シール(加熱炉や焼却炉など)
• 高荷重部の摺動・回転部(圧延機、連鋳機、アスファルトフィニッシャー等)
• 耐水・耐錆が必要な部位(輸出時や長期保管時の最終防錆等) • 食品加工や洗浄ラインの軸受(酸・アルカリ洗浄ラインにも対応)
• フォークリフト・油圧ショベル(バックホウ)・ホイールローダー・除雪機械等のピン・ブッシュ
• ユニバーサルジョイント、ドライブシャフト等
• 鉄道・新交通・遊園地などの軸受・減速機・パンタグラフ部位
• 製紙・段ボール(コルゲートマシン)・電動工具・洗車機などの産業機械の摺動部・ローラー軸受
• レジャー・施設・屋外設備(スキーリフト、遊具、ワイヤーロープ等)の保護・潤滑 • 放射線影響下の設備

 

切り替えで改善しやすいポイント
• モリブデン含有グリースからの切り替えで、周辺の汚れを低減
• リチウムグリースからの切り替えで、給脂頻度を削減 • 高温・高荷重・防錆を一製品でまとめて対応(油種統一も可能)
• 水・湿気の多い環境での安定稼働
• メンテナンスの手間を低減(人手不足の現場にも好評)

 

カルフォレックスEPが自社設備に合うか確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

3-3. 〜250℃:耐熱フッ素グリース ―「通常の耐熱グリースを用いても流失・固化してしまう」温度帯―

この温度帯で起きやすい課題
250℃前後の高温環境では、一般的な耐熱グリースそのものが短期間で機能しなくなるケースが出てきます。
基油の蒸発:鉱油・一般合成油の基油が高温で揮発し、グリースが急速に枯渇する
固化・炭化:蒸発後の残渣が固まり、軸受の動きを妨げたり、分解清掃の手間が増える
流失:追加給脂ができない設備では、グリース切れが起きやすく、設備停止に直結する
給脂困難な構造:乾燥炉の内部軸受、タイヤ加硫機のスライド部、塗装ラインの軸受など、定期給脂が難しい設備では「長く持つこと」が必須条件になる
「他の耐熱グリースを使ったが、すぐ枯れてしまった」「開けたら真っ黒に焦げていた」という声が出やすい温度帯です。

 

課題を解決するために:ロゲネストラムダHJM-8
ロゲネストラムダHJM-8は、フッ素油を基油に使用し、フッ素樹脂(PTFE)を増ちょう剤とした高温グリースです。基油の蒸発しにくさと、高温での増ちょう剤の安定性が特長で、長時間の追加給脂なし運用を可能にします。

 

主な用途
• 工業用乾燥炉の軸受 • 段ボール製造装置の軸受
• タイヤ製造装置のスライド部 • 塗装ライン搬送軸受

 

切り替えで改善しやすいポイント
• 高温でのグリース流失・固化の抑制
• 追加給脂の削減または省略 • 設備の(分解)清掃作業の頻度低減
• 給脂困難な部位での長期安定稼働

 

▶ ロゲネストラムダHJM-8が自社設備に合うか確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

3-4. 〜500℃:超耐熱グリース ―「通常のグリース潤滑が成り立たない」温度帯―

この温度帯で起きやすい課題
500℃前後に至ると、あらゆる基油が揮発してしまい、通常のグリース潤滑そのものが成立しません。
基油の完全揮発:油分が残らないため、一般的な流体潤滑・境界潤滑が期待できない
スラッジ(燃えカス、潤滑油だと油すすや摩耗粉など)の堆積:=残渣(残りカス)が炭化して蓄積し、設備の固着や動作不良を引き起こす
固着・かじり:高温下での金属接触により、摺動部が固着・損傷するリスクが高い
通常グリースが通用しない環境:製鉄・窯業・焼成炉周辺は、まさに「グリースが使えない場所」として扱われてきたケース
「何を塗っても持たない」「油をつけると燃える」「固着して外れない」といった声が出る現場です。

 

課題を解決するために:超耐熱グリースGP
超耐熱グリースGPは、揮発しやすい基油と固体潤滑剤を組み合わせた設計で、基油がスラッジを残さず揮発し、残存する固体潤滑剤が潤滑を維持する仕組みを持っています。グリース潤滑というよりも、高温下での固体潤滑への移行を目的とした製品です。

 

主な用途
• 製鉄設備
• 窯業設備
• 加熱炉周辺
• 高温で固着しやすい摺動部
• 押出加工摺動部

 

切り替えで改善しやすいポイント
• 通常グリース不可の設備での潤滑確保
• 固着・かじりの低減
• スラッジ堆積の抑制(スラッジレス設計)

※500℃前後の用途では、実際の温度分布・熱源からの距離・接触時間によって必要条件が大きく変わります。
まずは現場条件を整理のうえ、弊社営業窓口へご相談ください。

 

▶ 超耐熱グリースGPについて現場条件を整理して相談したい方は[お問い合わせページ]へ

 

4. 用途・お悩み別の耐熱グリースの選び方

 

「温度がわからなくても、症状からたどれる」 前章では「使用温度」を起点に整理しました。しかし実際には、「使用温度が何℃かはっきりわからないが、現場で困っていることはある」というケースが少なくありません。 例えば、こんな声です。
• 「夏になると急にグリースが垂れてくる」
• 「給脂したばかりなのに、すぐグリース切れになる」
• 「軸受のさびがなくならない」 • 「黒いグリースが周辺を汚している」
• 「高温の乾燥炉の中で、給脂できない部位がある」
• 「いろいろ試したが、通常のグリースがすぐ焼き切れる」 このような症状・困りごとを入口に、グリース選定を考えるのがこの章の目的です。

 

※温度帯から選びたい方は、[3章 使用温度別の選び方] をご参照ください。

 

4-1. 「グリースが垂れる・飛び散る・すぐなくなる」

 

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
夏場や高温時にグリースが垂れてくる 屋外設備・建機・農機
給脂してもすぐなくなる 高温+高回転の軸受
周辺部品や床にグリースが飛び散る 回転部・スプロケット周辺
ピンやブッシュのガタが増えてきた 泥水・振動の多い環境

 

なぜ起きるのか
一般的なリチウムグリースは、高温(おおむね130℃超)になると軟化して流動性が増し、保持力が低下します。その結果、部品の外へ流れ出たり、回転による遠心力で飛び散ったりします。加えて、振動や泥水の多い屋外環境では、グリースが部品表面から押し流されやすくなります。

 

改善のポイント
• 高温でも形を保ちやすいグリースへの切り替え
• 付着性(くっつきやすさ)・残留性が高く、振動や泥水に負けにくいグリースの採用
• 給脂頻度を下げられるグリースへの変更による、保全(メンテナンス)工数の削減

 

候補製品
→ ユーレットWEP(150〜180℃前後)
→ カルフォレックスEP(〜210℃前後)

 

4-2. 「荷重・衝撃・振動がかかる部位で、グリースが持たない」

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
軸受の摩耗が早い 重機、プレス機、大型搬送設備
焼付きが繰り返し発生する 高荷重+高温の重複環境
衝撃のかかる部位のグリースが早期に切れる ユニバーサルジョイント、ピン・ブッシュ等
さびと摩耗が同時に進行している 港湾・屋外の大型機械

 

なぜ起きるのか
高温下では油膜が薄くなりやすく、そこに高荷重や衝撃が加わると、金属同士の接触が起きやすくなります。一般的なグリースや耐熱だけを重視した製品では、極圧性能(重い荷重に耐える力)が不十分なケースがあります。また、荷重のかかる部位は摩擦熱により発熱し、温度上昇がさらに進むことでグリース劣化を加速させる悪循環に陥ることがあります。

 

改善のポイント
• 高温下でも油膜を維持できる極圧性能(重い荷重に耐える力)の高いグリースへの切り替え
• 荷重・衝撃・熱を一製品で対応できる複合性能グリースの採用
• 焼付き・摩耗の頻度低減による部品交換コストの削減

 

候補製品
→ カルフォレックスEP(耐熱・耐荷重・防錆を一製品で対応)

 

4-3. 「水・湿気・薬品・さびに困っている」

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
高温ラインなのに軸受がさびる 製紙・港湾・洗浄ライン
水洗い後にグリースがなくなっている 食品・飲料・製紙設備
酸・アルカリがある環境でグリースが劣化する 化学工場・洗浄ライン・製紙工場
グリースが乳化して白くなる 水蒸気・高湿度の環境

 

なぜ起きるのか
水・蒸気・薬品にさらされる環境では、グリースが乳化(水と混ざって性能低下)したり、化学的に分解されたりします。さらに高温が加わると劣化が加速し、軸受の金属面が露出してさびが進行します。一般的な耐熱グリースは、耐熱性を高めても耐水性・防錆性が十分でないものも多く、高温×水×腐食が重なる環境では早期劣化しやすいことがあります。

 

改善のポイント
耐水性・耐薬品性に優れたグリースへの切り替え
防錆成分が配合されたグリースによるさびリスクの低減
複合過酷条件を一種類のグリースでカバーすることによる管理の簡素化

 

候補製品
→ カルフォレックスEP(耐水・防錆・耐荷重・耐熱を一製品で対応)
→ ロゲネストラムダHJM-8(高温×耐薬品×低汚染が必要な場合)

 

4-4. 「黒いグリースが設備や周辺を汚している」

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
モリブデン入りグリースの黒い汚れが設備に付着する 建機・農機・産業機械
周辺の製品・素材に黒い汚染が出る 食品・繊維・塗装ライン周辺
作業者の手や衣類、環境が汚れる 頻繁に給脂する設備

 

なぜ起きるのか
二硫化モリブデンなどを含む黒色グリースは、優れた耐荷重性を持つ反面、飛散・流出によって設備・製品・作業環境を汚染しやすいという課題があります。黒色汚染は「見た目の問題」にとどまらず、設備の点検や異常の発見を困難にする場合もあります。

 

改善のポイント
同等以上の耐荷重性を持ちながら、汚れにくいグリースへの切り替え
廃棄・清掃コストの低減
設備の視認性・点検性の改善

 

候補製品
→ カルフォレックスEP(モリブデン不使用で同等以上の耐荷重・防錆性能を持つ万能グリース
→ ユーレットWEP(耐荷重性を維持しつつ、汚れを低減)

 

4-5. 「給脂できない・給脂頻度を減らしたい」

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
炉内や高温部の軸受に近づけず、給脂できない 乾燥炉・加硫機・焼成炉の内部
給脂のたびに設備を止めなければならない 連続運転ライン
給脂頻度が多く、保全工数がかさんでいる 多点給脂の設備
高所・密閉構造で給脂作業が危険または困難 大型設備の高所軸受

 

なぜ起きるのか
高温環境では、通常のグリースの基油が蒸発しやすく、消費が早いため、給脂間隔が短くなりがちです。また、炉内・密閉構造・連続ラインでは、そもそも給脂作業自体が難しい場合があります。「給脂しようにも近づけない」「止めると損失が大きい」という場合は、グリース自体の長寿命化・給脂レス化が根本的な解決策になります。

 

改善のポイント
基油の蒸発しにくい(低揮発性)グリースで、給脂間隔を延長
追加給脂なしでの長時間運転を可能にする製品への切り替え
設備停止リスクの低減とライン稼働率の向上

 

候補製品
→ ロゲネストラムダHJM-8(250℃前後の高温でも長期間追加給脂なしで運用実績あり)
→ カルフォレックスEP・ユーレットWEP(180〜210℃前後で給脂間隔の延長が見込める)

 

4-6. 「通常のグリースが炭化(熱で焦げて固まること)して、使えない」

こんな現場に多い症状です

症状 起きやすい状況(一例)
どのグリースを塗っても短時間で消えてしまう 製鉄・窯業・焼成炉周辺
摺動部が固着して動かなくなる 500℃前後の超高温部位
グリースを塗ると煙・炎が出る 熱源に近い部位
高温で使用されるボルトやナットが固着して外れない フランジ・炉体接合部

 

なぜ起きるのか
500℃前後の超高温では、あらゆる基油が揮発してしまいます。つまり、通常の「油分による潤滑」はこの温度域では機能しません。一般的な耐熱グリースを使っても、油分がすぐに消えてスラッジ(残渣)が堆積し、固着・焼付きを悪化させることもあります。

 

改善のポイント
• 基油が揮発した後に固体潤滑剤が残存・機能する設計の超耐熱グリースを採用
• スラッジレスにより、残渣の堆積を抑える
• 「油で潤滑する」という発想から、「固体潤滑剤で保護する」発想への転換

 

候補製品
→ 超耐熱グリースGP(通常グリース使用不可の500℃前後の超高温専用品)

 

4-7. お悩みから候補製品を引く早見表

お悩み・症状 ユーレットWEP カルフォレックスEP ロゲネストラムダHJM-8 超耐熱グリースGP
垂れる・飛び散る・すぐなくなる
荷重・衝撃・振動で持たない ◎◎
水・湿気・さびに困っている ◎◎
黒いグリースの汚れを解消したい ◎◎
給脂できない・給脂を減らしたい ◎◎
薬品・クリーン環境への対応 ◎◎
通常グリースが使えない超高温 ◎◎

◎◎:特に有効 ◎:有効 ○:ある程度有効 ー:対象外または向かない
※複数の◎がある場合は、使用温度・荷重条件を合わせて最終判断してください。

 

🔎 症状が複数ある場合は「条件が重なる製品」を選ぶ

「垂れる」+「水がかかる」+「荷重も大きい」のように複数の悩みが重なる場合、それらをまとめて対応できる製品を選ぶことが、グリース管理の簡素化にもつながります。

 

迷った場合はこちら:[お問い合わせページ](用途が決まっていない段階からお手伝いできます)

 

5. ニッペコの耐熱グリース4製品 比較 ―他製品との違いと、耐熱以外の性能まで整理―

ここでは、ニッペコの耐熱グリース4製品を比較してご紹介します。

 

5-1. 4製品の比較表

製品名 タイプ 温度帯の目安 得意分野 主な用途 切替で期待しやすい改善
ユーレットWEP ウレア 150〜180℃前後 耐熱性、耐荷重性、持ちのよさ 建機、農機、屋外設備、減速機 垂れ・飛散の低減、給脂頻度の低減
カルフォレックスEP カルシウムスルフォネート複合石けん 〜210℃前後 耐熱性、耐荷重性、耐水性、防錆性を合わせもつ 加熱炉周辺、港湾機械、製鉄機械、製紙機械 汚れ低減、給脂頻度低減、設備安定化
ロゲネストラムダHJM-8 フッ素樹脂(PTFE) 〜250℃前後 耐熱性、長時間追加給脂なし 加熱炉、タイヤ加硫機、塗装ライン、段ボール製造装置 垂れの低減、長時間追加給脂なしでの運用が可能
超耐熱グリースGP 無機/固体潤滑剤 〜500℃ 超高温部位で、通常グリース使用が不可能な設備 製鉄、窯業、加熱炉周辺、押出加工摺動部 通常グリース使用不可能な設備で、グリース使用可能

※上記は代表的な選定目安です。実際の採用は、温度だけでなく荷重・速度・雰囲気・給脂方法も含めて判断します。

 

どの製品が自社環境に向くか比較しながら相談したい方は[お問い合わせページ]へ

 

5-2. ユーレットWEP ―一般的なリチウムグリースからの”一段上”の耐熱・長寿命品―

他製品との違い

比較対象 ユーレットWEPの優位点
一般リチウムグリース 耐熱性・付着性・長寿命が大幅に向上。高温での垂れ・流出を抑えやすい
リチウム複合グリース 同等〜それ以上の耐熱性に加え、耐荷重性・機械安定性に優れる
モリブデン含有グリース 同等以上の耐荷重性を持ちながら、黒色汚染がない

 

耐熱以外の強み
耐荷重性:ウレア系の骨格が高荷重・振動下でも安定した油膜を維持しやすい
付着性:振動や泥水が多い屋外環境でも、部品からグリースが失われにくい
機械安定性:ポンプや自動給脂機との相性もよく、集中給脂システムへの対応も可能

 

このような場合に選ばれやすい
建機・農機のピン・ブッシュが夏場にガタつく
リチウムグリースの給脂頻度が多く、保全工数を減らしたい
モリブデン入り黒グリースの汚れを改善したい

 

ユーレットWEPの詳細を確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

5-3. カルフォレックスEP ―耐熱・耐水・防錆・耐荷重・耐薬品を一製品でまとめる複合対応品―

他製品との違い

比較対象 カルフォレックスEPの優位点
一般リチウムグリース 耐熱・耐荷重・耐水・防錆がすべて向上。高温×水×荷重が重なる環境に対応
ウレアグリース 耐水性・防錆性・耐荷重性がさらに高い。水のかかる設備や港湾環境に強い
モリブデン含有グリース 同等以上の耐荷重性を持ちつつ、黒色汚染なし。防錆性も高い

 

耐熱以外の強み

耐水性:水・蒸気・湿気の多い環境でも乳化しにくく、グリースが残りやすい
防錆性:カルシウムスルフォネート系の防錆力は非常に高く、さびやすい環境に適している
耐荷重性(EP性):高い極圧性能を持ち、重荷重・衝撃荷重がかかる部位でも油膜切れを起こしにくい
耐薬品性:酸・アルカリ洗浄ラインでも劣化しにくい 放射線耐性:放射線影響下の設備でも使用実績あり

 

このような場合に選ばれやすい

製紙・港湾・製鉄で高温×水×高荷重が同時にかかる
二硫化モリブデンなどを含む黒色グリースの汚染を解消しながら耐荷重性も維持したい
一種類のグリースで複数の過酷条件をまとめて対応したい

 

カルフォレックスEPの製品詳細を確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

5-4. ロゲネストラムダHJM-8 ―「高温でも長く持つ・汚れない・追加給脂しなくてよい」を求める現場へ―

他製品との違い

比較対象 ロゲネストラムダHJM-8の優位点
一般耐熱グリース(鉱油系) 基油の蒸発が格段に少なく、高温での長寿命が大幅に向上
ウレアグリース より高い温度域に対応。フッ素油の熱安定性・低蒸発性で、250℃前後でも流失・固化しにくい
カルシウムスルフォネート複合 温度域が高く(〜250℃)、フッ素系の低汚染性・耐薬品性に優れる

 

耐熱以外の強み

長寿命性・低給脂性:フッ素油の低蒸発性により、追加給脂なしでの長期運用が実現しやすい
低汚染性(クリーン性):フッ素系素材の特性から、蒸発・飛散が非常に少なく、周辺を汚しにくい
耐薬品性:フッ素系基油・増ちょう剤は化学的に安定しており、薬品・溶剤との接触にも強い
耐水性:水・蒸気環境での安定性にも優れる 真空適性:蒸発しにくい特性から、高真空環境でも使用実績あり
樹脂・材料との相性:一般的な合成ゴム・樹脂材料への影響が少ない

 

このような場合に選ばれやすい

乾燥炉・加硫機など、250℃前後で追加給脂が難しい設備 高温でグリースが早期に枯れてしまう問題を解消したい
クリーンな環境で蒸発・汚染を最小化したい

 

ロゲネストラムダHJM-8の製品詳細を確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

5-5. 超耐熱グリースGP ―通常のグリース潤滑が通用しない500℃前後の超高温専用品―

他製品との違い

比較対象 超耐熱グリースGPの優位点
一般耐熱グリース全般 基油が揮発した後も固体潤滑剤が残存し、潤滑機能を維持できる

 

耐熱以外の強み(特殊性能)
スラッジレス:基油が早期に揮発し、残渣の炭化・堆積を抑える設計
固体潤滑への移行:揮発後に残った固体潤滑剤が金属面を保護し、焼付き・固着を低減
固着防止効果:高温ボルト・ナット・フランジへの塗布で、熱後の固着解消にも使われる

 

このような場合に選ばれやすい
製鉄・窯業・焼成炉周辺で「通常のグリースがすぐ焼き切れる」設備
高温摺動部の固着・かじりが繰り返し発生している
通常グリース使用不可の部位に何か塗布したい

 

超耐熱グリースGPの製品詳細を確認したい方は[お問い合わせページ]へ

 

6. 価格だけで選ばない。耐熱グリースはトータルコストで考える

耐熱グリースは、一般的なグリースと比べて価格が上がることがあります。ただし、価格だけで判断すると、かえって損をする場合があります。 なぜなら、高温環境ではグリースの劣化が早く、 • 給脂回数が増える • 点検や交換の手間が増える • 廃棄量が増える • 部品摩耗や焼付きのリスクが上がる • 設備停止につながる といったコストが発生しやすいからです。

 

実際には、初期価格よりも、使い続けたときの総コストで見ることが重要です。
ニッペコの高耐熱グリースは、「非常にコスパが高い」と評価いただくケースも多く、結果的に保全費用の削減につながることがあります。

 

トータルコストで見るポイント

コスト項目 高温環境で起きやすいこと
グリース単価 適切な製品選定で無駄な使用量を削減できる
給脂頻度 長寿命グリースへの切り替えで工数を削減できる
保全工数 給脂・点検・清掃の頻度低減で人件費を圧縮できる
設備停止リスク グリース起因の焼付き・固着を防ぐことでライン稼働率が向上する
部品交換費用 摩耗・腐食の低減で軸受や摺動部品の寿命を延ばせる
廃棄コスト 給脂量・廃グリース量の削減で処理費用を抑えられる

 

トータルコストの観点から製品選定を相談したい方は[お問い合わせページ]へ

 

7. よくある質問

7-1. 何℃から耐熱グリースに切り替えるべきですか?

130℃前後をひとつの目安に考えるとよいです。ただし、温度がそこまで高くなくても、グリースが垂れる、減りが早い、飛び散るといった症状があれば、見直しのタイミングです。

 

7-2. 温度だけで選んでも大丈夫ですか?

温度は大切な基準ですが、それだけでは十分ではありません。荷重、水、薬品、粉じん、精密性、給脂方法も合わせて確認する必要があります。

 

7-3. どの製品が一番おすすめですか?

用途によって変わります。
• 建機・農機・屋外設備なら → ユーレットWEP
• 高荷重・防錆・高温ラインなら → カルフォレックスEP
• 長時間追加給脂不要なら → ロゲネストラムダHJM-8
• 通常グリース使用不可設備なら → 超耐熱グリースGP

 

7-4. どこに相談すればよいですか?

グリース選定は、設備条件が同じように見えても、温度分布や荷重、給脂方法で最適解は変わります。[お問い合わせページ]からご連絡ください。

 

7-5. 用途がまだはっきり決まっていないのですが、相談できますか?

もちろん可能です。「どの製品が良いかわからない」「今のグリースから切り替えたいが、条件整理から相談したい」という段階でも問題ありません。
[お問い合わせページ]からお気軽にどうぞ。

 

7-6. 製品カタログはありますか?

はい。検討段階で比較しやすいように、カタログのご案内も承れます。
まずは、現在の設備条件をお知らせください。
▶ [製品カタログのお問い合わせはこちら]

 

8. まとめ

耐熱グリースは、高温環境で使うための専用グリースですが、選び方の基本は温度だけではありません。

実際には、
• 使用温度
• 荷重
• 耐水性
• 耐薬品性
• 給脂頻度
• トータルコスト
まで含めて見ていく必要があります。

 

本記事では、
• 150〜180℃:建機・農機、屋外設備 → ユーレットWEP
• 〜210℃:高温ライン軸受、耐水・高荷重環境 → カルフォレックスEP
• 〜250℃:タイヤ加硫機、段ボール製造装置、加熱炉、塗装設備 → ロゲネストラムダHJM-8
• 〜500℃:製鉄、窯業、焼成炉周辺 → 超耐熱グリースGP という目安で整理しました。

「今のグリースで本当によいのか」「別製品に切り替えると改善できるのか」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
用途がまだ固まっていない段階でも、条件整理からお手伝いできます。カタログのご案内も可能です。

 

まずはお気軽にご相談ください:[お問い合わせページ]
カタログ請求や設備条件の整理など、検討の入口からでもお気軽にご相談いただければ幸いです。

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